ビルメンにとって緊急対応は重要な仕事の一部ですが、いきなり発生する事項を瞬発的に捌く事は、ベテランのビルメンでも難しい事です。なので、いつも頭の片隅には「あのトラブルがあった場合はこうして・・・あのトラブルがあった場合はああして・・・」という風に、ある程度シミュレーションしておく必要があります。
今日は緊急対応マニュアルでは見た事があるけど、実際にはやった事が無かった緊急対応を経験しましたので、それについて書こうと思います。オチはちょっと切ない感じなのですが、普段頭の片隅に、この対応に関してシミュレーションしておいて良かったなと感じました。もし何もシミュレーションしてなかったら、きっと上手く対応する事は出来なかったと思います。
救急車が来る!
一本の電話が全ての始まりでした。
内容は、ざっくりいえばテナント内で急病人が出た為、救急車を呼んだというものでした。特に何か防災センター側でしてくれ!という電話ではなく、単純に「救急車呼んだけど、ビビらないでね」的な連絡のつもりでテナントが電話してくれたようでしたが、そんな電話を受けて「はい、わかりました」で終わることは防災センター側では出来ません。
救急車が来る!という事は、「救急車をビル内に招き入れ、救急隊をテナントに案内し、急病人を無事に救急車まで運んでもらう事」はビルメンの仕事となります。もし救急隊がビル内で迷ったりして急病人を病院へ運ぶのが遅れた場合は、これはビル管理側の責任となります。
そうなれば、まずやる事はひとつ!
ストレッチャーが入るエレベーターの確保です。
僕のビルでは、急病人を運ぶストレッチャーを使用できるエレベーターは一つしかありません。なので、必然的に救急車が来たらそのエレベーターを使用してもらう事になります。
ただ、そのエレベーターは、他のビルスタッフや業者も使用するので、救急隊がこのエレベーターを使用する際、他の人が使用していて全然下まで降りてこない可能性もあるのです。そうなるのは非常にマズイので、ダッシュでエレベーターの確保に行きます。一応、防災センター側で強制的にエレベーターを1階に着床させる事は出来るのですが、それは最終手段、とりあえず人力でエレベーターを確保します。
確保をした後、特殊な鍵を使用してそのエレベーターを専用運転にします。こうする事で、他の階で呼び出しボタンを押してもエレベーターは動きません。つまり、このエレベーターのコントローラーは僕になったわけです。
しかし、救急隊を完璧な状態で待っていたのですが、全然来ません。
え?なに?何が起きちゃったの?
ダッシュで専用運転にしたので、ちょっと息があがっていたのですが、完全に普通の呼吸になっちゃうぐらい待ちました。あれあれ??
その後、防災センターから電話が来たのですが、なんとテナントさんが「普通のエレベーターで来てください」と救急隊に直接言ったみたいです。「ストレッチャーが入んないですよ」と言われたらしいのですが「じゃあストレッチャーは置いて」と言われたそうです。
結局、急病人は普通のエレベーターで救急隊に担がれて救急車まで運ばれていったそうです。ちなみに、救急車も、普通はビルの駐車場に停めるのですが、テナントさんが場所を指定したらしく、別の位置に停まっていたので警備も気づきませんでした。
防災センター側は結局、何もする事が出来ませんでした。
というか、救急隊にすら会わないまま終わってしまいました。急病人は無事だったという事ですが、これは非常に危ない事だと思います。色々とテナントは対応が間違っていると言わざるを得ません。
普段はしょ〜もない事でもすぐに防災センターにヘルプを出してくるのに(例「電波時計が狂うけど、ここの磁力大丈夫?ちょっと調べて」など)こういった命が関わっている事に関しては、自分たちの判断でやろうとする・・・。こういった緊急時こそ、うまく連携をとってやっていくべきなのでは?と感じました。まぁ、テナントからすれば防災センターに迷惑かけたく無い!という配慮からなのかもしれませんが(それとも大袈裟にしたく無いから?)
ちなみに、エレベーターの専用運転を解除したあと、1階に降りる為に乗っていたら、すぐ下の階で何も知らずエレベーターをずっと待っていたおっちゃんが鬼の形相で入ってきて、ビビりました。
病人対応のために専用運転にしてました!と伝えると「え!?大丈夫なの!?このエレベーターに乗ってなくて!」と心配してくれました。「僕も心配なんすよね・・・」と伝えると「本当に大丈夫?俺一回降りようか??」と言ってくれました。結局、このおっちゃんとなんとなく気まずい空気のまま1階に降りたのでした。
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